見た目が美しく、日々の手入れがしやすいことはもちろん、家族が年齢を重ねても安全に使い続けられ、10年後、20年後には完成当初よりも趣や深みが増していることが、良い庭の条件だと私たちは考えています。
また、庭に対する考え方は、家族構成や生活スタイルによって異なります。
庭仕事を楽しみたい方もいれば、できるだけ除草や剪定の手間を減らしたい方もいます。そのため、流行のデザインをそのまま取り入れるのではなく、「この庭で家族がどのように暮らしたいのか」を明確にすることが重要です。
この記事では、30年以上にわたり造園・外構・石工の現場に携わってきた経験から、長く安心して使える庭づくりの考え方を解説します。
良い庭とは、単に見た目が美しいだけの空間ではありません。
庭で何を楽しみたいのか、家族がどのように過ごしたいのかという目的があり、生活の一部として使われてこそ、庭の価値が生まれます。
例えば、庭や外構デザインには次のような価値があります。
何の目的もなく空間を埋めるだけでは、庭が十分に活用されなくなる可能性があります。
まずは自分たちの趣味や生活スタイル、庭で過ごしたい時間を考えることが、庭づくりの出発点です。
庭づくりを考える際は、現在の家族構成だけでなく、10年後、20年後の暮らしを想像することが非常に重要です。
今は小さなお子様がいても、10年後には中学生や高校生になり、庭の使い方は変わります。さらに20年、30年と経過すれば、子どもが独立し、ご夫婦だけで暮らす可能性もあります。
同時に、ご自身の年齢についても考える必要があります。
若い頃には問題なく使えた段差や階段が、年齢を重ねることで負担になる場合があります。雨の日に滑りやすい床材や、大きく育ちすぎた樹木も、将来の危険や管理負担につながります。
庭づくりでは、次のような将来の変化を考えておくことが大切です。
完成時だけでなく、その先の暮らしまで考えることで、リフォームを繰り返さずに長く使える庭になります。
庭や外構は屋外にあるため、雨、風、日差し、土ぼこりなどの影響を受けます。
どのような素材でも、完成した直後の状態を永久に保つことはできません。そのため、汚れない素材を探すのではなく、年月による変化が味わいや深みになる素材を選ぶという考え方が重要です。
私たちはこれを、**「汚れを味方につける」**と言っています。
自然石やレンガなどの天然素材由来の物は、多少の色むらや汚れが付いても、それが不自然に見えにくい特徴があります。
時間が経つことで周囲の植栽や建物になじみ、完成当初よりも落ち着いた雰囲気になることもあります。
一方で、コンクリート、化粧ブロック、塗り壁などは、均一できれいな状態から汚れていくため、雨だれや黒ずみなどが目立ちやすい傾向があります。
もちろん、コンクリートやブロックにも機能面や価格面の多くのメリットがあります。
大切なのは、一つの素材だけに偏らず、コストバランスを考えながら自然石や植栽などを適切に組み合わせることです。
天然素材の中でも、木材については特に注意が必要です。
天然木は温かみがあり、庭との相性も良い素材ですが、使用する場所や施工方法によっては、腐朽やシロアリ被害が発生する可能性があります。
劣化した木材は、ささくれや破損によって危険な状態になることもあります。
そのため、天然木を使う場合は、次の点を慎重に検討します。
天然素材だからすべて長持ちするわけではありません。それぞれの性質を理解し、適切な場所に使うことが大切です。
庭づくりでは、デザインよりも先に安全性を考える必要があります。
特に重要なのが、段差、床材、植栽です。
段差を完全になくすことが難しい敷地もあります。
その場合は、一段ごとの高さや踏面の広さ、歩くときのリズムを考え、上り下りしやすい形に設計します。
完成時には問題がなくても、年齢を重ねたときには使いにくくなることがあります。将来的に手すりを設置できる余地を残すなど、長期的な配慮も必要です。
石、タイル、コンクリートは、同じ素材でも表面の仕上げ方によって滑りやすさが異なります。
雨にぬれる場所や、日陰で苔が生えやすい場所では、見た目だけで床材を選んではいけません。
素材の表面加工、勾配、水はけ、歩く方向などを総合的に考える必要があります。
植栽は、植えた直後の大きさだけで決めるものではありません。
成長の速い樹木や大きくなりすぎる樹木は、将来、剪定や落ち葉の管理に大きな手間がかかります。
根が広く張る樹木を狭い場所に植えると、舗装を持ち上げたり、建物や配管、土留めや塀に影響を与えたりする可能性もあります。
樹木を選ぶ際は、次の点を確認します。
小さなスペースに無理に木を植えると、数年後に負担になることがありますので、例えお客様から希望された樹種であっても、将来問題が起こる可能性が高い場合は、別の樹木や違う見せ方をご提案することがあります。
庭木を選ぶ際、多くのお客様が心配されるのが、毛虫などの病害虫です。
病害虫が発生しやすい樹木を植える場合は、その可能性を事前に説明し、年間管理の方法まで考えておく必要があります。
例えば、年に一度の薬剤散布や定期的な剪定が必要になる場合には、植える前にその手間や費用についてお伝えします。
庭木は、植えたときの価格だけで判断するのではなく、将来どのくらいの管理が必要になるかまで含めて選ぶことが重要です。
現在、庭づくりのご相談で最も多いのが、できるだけ手間のかからない庭にしてほしいというご要望です。
除草や剪定に時間をかけられない方が増えているため、防草シート、人工芝、コンクリートなどを活用することは、非常に有効な方法です。
ただし、庭全体をコンクリートや人工芝だけで仕上げてしまうと、機能的ではあっても、冷たく単調な印象になりやすくなります。
私たちは、人工的な素材を否定するのではなく、その機能性を生かしながら、自然石や植栽などの天然素材を組み合わせることを大切にしています。
人工素材と天然素材の双方の長所を生かすことで、管理の負担を抑えながら、自然の安らぎを感じられる庭をつくることができます。
あるお客様から、庭を広く使いたい一方で、除草の手間はできるだけ減らしたいというご要望をいただきました。
そこで、家族や子どもたちが広く使う部分には、防草シートを施工したうえで人工芝を敷きました。
人工芝のスペースを広く確保することで、子どもたちが安心して遊べ、日常的な除草作業も大幅に減らすことができます。
一方で、庭全体を人工芝だけにするのではなく、外からの視線が気になるリビングの前に、1坪から2坪ほどの小さな坪庭を設けました。
坪庭には植栽と自然石を取り入れ、地面には防草シートを施工したうえでさらに、防草シートの一部に必要最小限の穴を開け、ゴロタ石の間から小さな地被植物が顔を出すように植栽しました。
これにより、雑草が生えにくく、手入れの負担を抑えながら、自然なロックガーデンのような雰囲気をつくることができました。
広い人工芝の機能的な空間と、自然石や植栽を使った小さな坪庭を組み合わせることで、次のような庭になりました。
庭づくりには、すべての人に当てはまる一つの正解はありません。
植物を育てたり、剪定や草取りをしたりすることが好きな方にとっては、庭仕事そのものが趣味にもなります。
そのような方には、季節ごとの変化を感じられ、自分で手を入れることで完成していく庭が適しています。
一方で、仕事や子育てが忙しく、できるだけ屋外作業をしたくない方もいます。
その場合は、次のような方法を検討します。
庭の管理にどのくらい時間を使いたいのか、庭仕事が好きなのか苦手なのかを、設計前に率直に伝えることが大切です。
庭や外構の施工をする際、誰しも初期費用の設定に悩むはずです。
しかし、工事費を抑えることだけを優先すると、数年後に汚れや劣化が目立ち、補修や改修が必要になる場合があります。
一方で、完成時の費用が多少高くなっても、年月による変化が味わいとなり、長く使い続けやすい場合があります。
庭づくりでは、次の三つの費用を考える必要があります。
初期費用だけではなく、10年後、20年後まで考えを巡らせることが、結果として満足度の高い庭につながります。
庭は家と同じように、将来、子や孫の世代へ引き継がれる可能性があります。
そのときに、大きくなりすぎた庭木、処分が難しい庭石、維持に多額の費用がかかる設備などが残っていると、次の世代にとって大きな負担になることがあります。
だからといって、何もない庭にすればよいわけではありません。
将来の管理負担を抑えながら、家族の思い出や周囲の景色、庭での沢山の思い出を作ることも大切です。
今の暮らしだけでなく、家族が庭を手放す日まで想像して設計することで、長く安心して使える庭になります。
良い庭をつくるために、まず考えていただきたいのは、次の三つです。
見る庭なのか、遊ぶ庭なのか、植物を育てる庭なのかによって、必要な設計は異なります。
庭仕事が好きか、できるだけ手間を減らしたいかを、設計者に正直に伝えることが重要です。
子どもの成長、ご自身の年齢、車の台数、生活動線、相続などを考えることで、将来のリフォームや撤去の負担を減らせます。
手入れを大幅に減らすことはできますが、屋外空間である以上、完全に手入れが不要な庭をつくることは困難です。
防草シート、人工芝、砂利、舗装材を適切に使い、成長の緩やかな樹木を選ぶことで、除草や剪定の負担を抑えられます。
人工芝は、除草の手間を減らし、子どもが遊べる空間をつくるうえで優れた素材です。
ただし、庭全体を人工芝だけにすると単調になりやすいばかりか、どんな高級な人工芝にも耐久寿命が存在します。
その面積が多ければ多い程、張り直しをする際のコストは上がり、大きな負担につなが値ますので、耐久寿命の無い、自然石、玉砂利、地被植物、樹木などを部分的に組み合わせることをおすすめします。
一般的には、庭木の本数が少ないほど剪定や落ち葉の管理は減ります。
ただし、本数だけでなく、成長速度、成木の大きさ、根の張り方、害虫の発生しやすさなども重要です。少ない本数でも、植える場所や樹種を誤ると管理負担が大きくなることがあります。
全く問題ありませんが、いくつか条件があります。
むしろ、建築前から机上の図面上であれこれ考えるよりも、建物が完成してから日当たりや、周囲の人通り、隣人との目線などを考慮に入れ、詳細に考えて方がより満足感が高い仕上げ理になります。
しかし、建物が完成する前から外構や庭を検討することで忘れてはいけないことがあります。
予算組みと配管等の埋設物の位置、そしてGL(グランドライン:設定地盤高)です。
ある程度の構想は建築(玄関までの動線、駐車場位置、周囲の高さ、室内から見える景色の想像)などは、建物と同時に考えることで、余分な施工手間を省いたより使いやすく一体感のある計画になります。
良い庭とは、完成した瞬間だけ美しい庭ではありません。
家族の暮らしに合い、年齢を重ねても安全に使え、管理の負担が大きくなりすぎず、年月によって趣や深みが増していく庭です。
そのためには、現在の好みだけでなく、10年後、20年後、さらにその先の家族の姿まで考える必要があります。
自然石やレンガなど、経年変化を味わいに変えられる素材を選び、人工芝や防草シートなどの機能的な素材を適切に組み合わせることで、手入れのしやすさと自然の安らぎを両立できます。
庭づくりに絶対的な正解はありません。
大切なのは、自分たちが庭でどのように過ごしたいのか、どのくらい手入れができるのか、将来誰に引き継ぐのかを考え、それぞれの家族に合った庭を設計することです。
仲根石工造園では、造園、外構、植栽、石工の技術を総合的に考え、完成直後の美しさだけでなく、10年後、20年後も安心して使い続けられる庭をご提案しています。
庭づくりや外構工事をご検討の方は、現在のご要望だけでなく、将来の暮らしについてもお聞かせください。ご家族の生活に合った、長く愛着を持てる庭づくりを一緒に考えてまいります。
小牧で創業81年 株式会社仲根石工造園
代表取締役 仲根弘志郎
一級造園施工管理技士
文化財石垣技術保存協議会 技術会員
小牧市の老舗造園会社の3代目として18歳から造園・石工の仕事に携わり、30年以上にわたり、個人邸の庭づくり、外構工事、駐車場拡張、石積み、公共工事、史跡・文化財の修復に従事。世界文化遺産の修復にも携わり、伝統的な石工技術と現代の施工管理の両面から、文化財の保存と継承に取り組んでいる。
完成時の美しさだけでなく、今ある庭木や庭石を生かしながら、使いやすさ、管理のしやすさ、将来の暮らしまで考えた庭・外構づくりを大切にしている。